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ハードモードな話題

子どもも大人も、気軽にゆるっと集まろう。「ゆる活食堂」の夜を訪ねて

「好き」を持ち寄り、ゆるく集まる

2025年の暮れも押し迫った、ある日の夕方。とっぷりと日が暮れた王滝村の公民館「村民ひろば」に、ぽっと明かりが灯っていました。

熱気で窓ガラスがうっすらと曇る、王滝村公民館「村民ひろば」

なかに入ると、パーテーションの向こうには調理場に立つ二人の女性の姿が。

ゆる活」を主催する「子育てサークルわわわ」メンバーの山下さん、そして急きょ手伝いに入った半場さんです。

調理場に立つ山下さん、半場さん

この日はみんなで食卓を囲む、その名も「ゆる活食堂」を開催するにあたり、二人が大鍋で煮込んでいたのはメインメニューの豆乳シチューです。

キャベツ、にんじん、じゃがいも……と、野菜たっぷり、栄養満点。炊飯器からご飯が炊ける湯気もあがり、室内はほかほか、いい匂い。思わずおなかが空いてきます。

「できるだけ地元の野菜を使うことで、安心かつ安全の地産地消をめざしました」と、山下さん

ところでいったい、「ゆる活」とは? 山下さんにお聞きしてみました。

「『それぞれの好きなことを持ち寄って、ゆるーく活動しよう』をテーマに、2024年1月から開催している集まりなんです」

子どもの数が少なく、かつ村のあちこちに住まいが点在している王滝村。

「放課後や休みの日に、子ども同士が遊ぶ機会が少なくなりがち」

というのが、「ゆる活」開始のきっかけのひとつだったのだとか。
開催は月に数回程度。ちょっとした企画を用意しながらも、基本は自由に集って帰る、そんな集いの場が開かれています。

スポーツでも、ゲームでも、工作でも。参加者の「これやってみたいな」のひとことでたいていのことは開催決定! そんな柔軟さは、子どもの数が少ないからこそのメリット。さらに、子どもだけでなく、大人もゆるく集う場になれば、というのが、主催する田中さんや山下さんの願いです。

大人だけでもぜひ!
多世代交流をめざす「ゆる活食堂

今回開催されていた「ゆる活食堂」は、2024年11月からスタートした「ゆる活」の定番企画。

これまで、「おにぎりと豚汁の朝食」や「お豆食べ比べ」、「おやつづくり」など、さまざまな企画を月1回ペースで続けてきました。

子どもの居場所づくりを支援する「信州こどもカフェ」の一つとして登録されていますが、実施内容を「食事提供、多世代交流」としているとおり、「大人から子どもまで、さまざまな人がいっしょに食卓を囲む」のがコンセプトです。

「補助金をいただけているので、食事は無料です。『こども』の名前がついていることで遠慮される方もいるのですが、ぜひぜひ大人だけでも来てほしいです!」と、山下さんは話します。

サラダをつくる堤さん。そっと覗き込むのは息子のAさん

あれこれ話しているうちに、徐々に参加者が集まってきました。
「お野菜持ってきたよ、サラダつくるね」
そう言いながら台所にやってきたのは、堤さん。
「わあ、助かる!」と、山下さんたちも大歓迎。

慣れた手つきできゅうりを刻み、トマトを切って、ツナとあえて。パパッといろどり良い副菜ができあがりました。

堤さん特製サラダ。しょうゆ、レモン、にんにく、オリーブオイルのドレッシングであえて完成!
「こういうみなさんのご好意で成り立っているんですよ」と山下さん

気づけばもう、用意した椅子がすべて埋まるほどのにぎわいです。「さあ、お椀を持って。来た人からどんどん食べましょう〜!」そんな掛け声とともに、食事の時間がはじまりました。

企画者も参加者も
垣根のない「みんなの場所」

夕方6時をまわるころに、集まったメンバーが「ゆる〜く」食事をスタート。外の寒さが嘘のように室内はぽかぽか。子どもたちの笑い声、お母さん同士の会話など、あたたかなざわめきに満たされていきます。

続々と集まる子どもたちにシチューをよそう山下さん。
参加したお母さんからは「晩ご飯をここで済ませられるのは本当にありがたい」の声が多数聞かれた

「遅れてごめんね〜!」と、主催者のひとり・田中千央さんが到着するころには、子どもたちは今回のお楽しみ企画・焚き火を実行すべく、すでに食事を終えて外に集まっていました。ゆっくり談笑する人、サッと帰宅する人、皿洗いするよ!と台所に向かう人。

この「企画する側、参加する側」の垣根なさ、自由さも、みんなでつくる小さな場ならではです。

焚き火の番は、滞在中の長野県立大の学生が担当

この日用意した25名分のシチューは、ほぼすべて参加者のお腹のなかにおさまりました。

「でも、ごはんがたくさん余っちゃった! 分量の加減がいつもむずかしいんですよ」

山下さんがそう話していると、初参加だという富井さんから「私、おにぎり握っちゃおうか?」の声が。

「助かる、お願いします!」

こうして会場で食べきれなかった分は、参加できなかった家庭へ届けるなどして、毎回無駄なく分け合うのです。

「はじめて来たけど、こういうときにはつい、働きたくなっちゃうの」と富井聡美さん。
王滝村農業委員であり、長野県農村生活マイスターを任命されているのだそう

不便を逆手にとって
村の魅力を味わいたい

一般社団法人を設立し、オルタナティブスクールを運営する田中さんと、地域コーディネーターや学校支援実行委員長を務める山下さん。「ゆる活」を運営するお二人にとって、この企画は「気を張らずに、みんながゆるやかに『やりたいこと』を叶えて、ゆるやかにつながる場づくり」。

「村に子どもが少ないことは、もちろんデメリットかもしれません。けれど、この規模だからこそ味わえるのびのびとした時間や、一人ひとりに向き合えるゆとり、思いがけない出会いもたくさんあるはず」と、この村に暮らす魅力を力強く語る二人。「そんな『この村だからできる楽しみ』や、『ちょっとしたストレス解消』の一つが『ゆる活』になれば」と話します。

「事前予約のほうが運営するのは数が読めるしラクだけど、どうしても『行かなきゃ』になっちゃう。パッと思いついて『今日行ける』と思っても、参加できなくなってしまう。だからあえて、予約不要で続けているんです」(田中さん)

「自分だけでやっていると気詰まりな食事づくりも、みんなで済ませちゃえば楽だし、子どもも楽しんでくれる。暮らしのなかで、そういうシンプルな『行ってよかった』の息抜きが大事ですよね。あとは自分も楽しみたいから、今日は焚き火の前でいただく熱燗セットを持ってきました(笑)」(山下さん)

そう、誰もが無理をせずこの場を楽しむことが「ゆる活」の大切なポイントなのです。

「これからも細く長くゆるく、活動を続けます。一人でも多くの村民のみなさんに参加していただきたいし、村外の方もこの村を訪れた際にもし『ゆる活』が開かれていたら、気軽に顔を出してみてくださいね。お手伝いも持ち寄りも、大歓迎です!」