ハードモード移住相談

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ここがみんなの”まほろな場”になるように。まほろば珈琲・高橋卓也さん

まほろば珈琲 
高橋卓也さん

Profile_

高橋卓也

まほろば珈琲

たかはし・たくや/岐阜県生まれ。小学生のころから野外体験をしてすごし、コーヒーの魅力に気づいたのは中学生から。そんな現体験をもとに2022年、王滝村に地域おこし協力隊として移住。現在は集落支援員として施設整備や子どもたちの居場所づくりなどに取り組みながら、毎週木曜日に王滝小学校内コミュニティースペースを活用した「まほろば珈琲」を開催している。

場所は村の小学校!? こだわりの”無料”コーヒーを求めて

「王滝村で、こだわりのコーヒーが飲めるらしい。しかも、無料らしい!」。
そんな噂を聞きつけて、訪れた今回。
やってきたのは王滝村観光案内所からほど近い、意外な場所でした。

「まほろば珈琲」の看板が立つその場所は、なんと村の小学校。

村立小学校の空き教室を開放した「コミュニティールーム」を活用し、毎週木曜日にコーヒーを囲む場が開かれているのです。

しかし、
「無料のコーヒー提供」と言っても、あなどるなかれ。
机を並べた即席カウンターの上にはピシッとテーブルクロスが整えられ、さまざまなコーヒー道具がずらりと並びます。

「酸っぱいコーヒー、苦手じゃないですか?」
そう話しかけてくれたのが、まほろば珈琲の仕掛け人・高橋卓也さん。

「今日、おすすめしたい豆があるんです」。
と、ハンドドリップの一杯を丁寧に淹れてくれました。

一杯ずつ、丁寧にコーヒーを淹れてくれる「まほろば珈琲」高橋卓也さん
コミュニティールームから図書館に続く廊下。白衣姿の先生らしき人の姿が見えた

部屋の向こうを見れば、図書館(これも村民に開放)へと続く廊下が。
小学校であることをつい忘れてしまうほど。香りも居心地の良さも、コーヒー店さながらの空間です。

ほどなく目の前に届いたコーヒーをひと口。
フルーティーなのにしっかりと旨味があって、おいしい・・・!
その味に感激するほどに、この不思議な巡り合わせについて、考えてしまいます。
なぜここに、「まほろば珈琲」が? これほどのこだわりは、どこから?
来客の合間を縫って、高橋さんにお聞きすることにしました。

人生にアウトドア時間と珈琲を。そして出会った王滝村

じつは、王滝小学校を拠点とする「まほろば珈琲」は、この小さな村で「こんな場所があったらいい」と「こんな場所をつくりたい」の重なりで生まれた場なのだとか。
もちろん、その大きなきっかけの一つは、高橋さんの存在です。

2022年、地域おこし協力隊として村に移住した高橋さん。
岐阜県に生まれ、幼少期に「父に無理やり連れられて」週末キャンプをする日々を過ごしていた高橋さん、気づけば無類のアウトドア好きになっていたのだとか。

加えてもうひとつ、中学生のときに大好きになったのがコーヒー。
社会人経験を経た高橋さんが「アウトドア」と「コーヒー」の二つを楽しめる場所をさがすなかで辿り着いたのが、王滝村だったのです。

「料理の専門学校を出て、最初は京都の老舗ホテルで料理人として働きました。そこで働くうちに『やっぱりちゃんと学びたい』と思うようになったのが、コーヒーの世界。そして某大手コーヒーチェーンに勤務したのち、現在に至ります」

これまでの道のりを穏やかに話してくれる高橋さん

当初、地域おこし協力隊としての村にやってきたときのミッションは、おんたけ休暇村のスタッフ勤務。その任期途中で現在につながる「コミュニティスペースでコーヒーを」のアイデアを村や学校にプレゼンし、みごと実現することになったのだそう。

「話を聞いてくださった校長先生や教頭先生が、とても良い方たちで。周囲には喫茶店が無いという環境でもあり、無料のコーヒーを提供する場を開くことが許されたんです」

じつは、以前よりこのコミュニティスペースは村民に開放されていましたが、「用もないのに学校に行くなんて」との遠慮が先立ち、なかなか活用されていなかったのだとか。どうしたらここが本当の意味で村民に開かれた場となるか、村の課題とされていました。
そこにもたらされた、まほろば珈琲の提案。これを採用したおかげで、少ない日も20人程度、多い日には60人以上の人が訪れるようになったのです。

この「効果」が認められ、まほろば珈琲は継続が決定。地域おこし協力隊の任期満了後も、「集落支援員※」の任務の一貫として、この場を続けているのです。

※集落支援員・・・地方自治体からの委嘱を受け、市町村職員とも連携しながら、集落の「目配り役」として巡回、状況把握をなどを行う

コーヒーも、場づくりも。本気で楽しむから、やりがいになる

・・・と、高橋さんに話をお聞きしていると、

「こんにちは〜」

と、お客さまがやってきました。

あれっ、どこかでお見かけした・・・と思ったら、当webサイトの「グローバル女子会」にご登場いただいた、宮原華菜子さんでした。

まほろば珈琲にふらりとやってきた宮原さん

前回の記事公開後に、ワーキングホリデーでオランダに滞在していたという宮原さん。再び王滝村での暮らしを再会するなかで、まほろば珈琲の時間は「ほっとひと息つける、嬉しい存在」と話します。

「今度、こういう面白いコーヒーを味わう会もやるから、ぜひ!」

高橋さんが宮原さんにおすすめしたのが、「インフューズドコーヒーを楽しむ会」。「インフューズドコーヒー」?聞き慣れませんがこれは、コーヒーの生豆をフルーツやスパイスとともに発酵させて香りを移す、近年のコーヒーのトレンドのひとつ。そんな最先端のコーヒーも、まほろば珈琲では楽しむことができるのです。

続いてやってきたのは、王滝村と包括連携協定を結んでいる、「長野県立大学」のみなさん。村での研究発表の終了後、プチ打ち上げのようにこの場を訪れたのだそう。

もう何度もここを訪れているという中澤弥子教授も、「今日が木曜日でよかった!」と、うれしそう。カウンターの前はコーヒーを待つ人々で満席となりました。

いよいよ店内が慌しくなり、そろそろ取材チームはお暇の時間。最後に高橋さんに「この村の魅力」そして「まほろば珈琲のこれからの展望」について、お聞きしてみました。

「『まほろば』って、『真秀ろば』と書く日本の古語で『素晴らしい場所、済み良い場所』の意味があるんです。

大好きなアウトドアとコーヒーを軸に、『お金に振り回されないところに幸せを感じる暮らしがしたい』と、僕自身が『まほろば』を探してここに辿り着きました。そしていま、まさにそういう日々が過ごせている。自分にとっての理想的な暮らしを実現できるこの王滝村に、大きな魅力を感じますし、感謝しています。

そして、もうひとつ。

まほろば珈琲は無料のコーヒー店ですが、自分の情熱がなくなってしまったら、続けることはできないと思っているんです。だから引き続き、淹れ方も豆のことも追求して、本気でコーヒーを楽しみたい。そして、地元の人から旅行者まで、世代や立場を超えた人が気軽に集える『まほろば』となるように、これからも長くこの場を続けていきたいです」

ちょっとはにかみながらも、まっすぐ話してくださった高橋さん。


たしかに、高橋さんのコーヒー談義に誘われるように、訪れる人が自分のことを話したり、話さなくてもそこで心地良さそうに時間をすごしていたり。高橋さんのお人柄と、コーヒーへの「熱」が、この場を心地よくあたためているのでしょう。 また一方で、人口が減少し、飲食店も少なくなった”ハードモード”の王滝村だからこそ、人々が高橋さんが紡ぐこの場のあたたかさを誰もが大切にしていることも、伝わってきました。

「『まほろば珈琲』は、最近増えている海外からの旅行者にも大好評ですよ!」とは、前出の宮原さん。これから王滝村を旅する方や、移住を検討するみなさんにも、木曜日を狙って訪れることを心からおすすめします。

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