冬はやっぱりハードモード!
祖父母の記憶が残る古民家に暮らして
2025年7月、久米島から王滝村へと移住を果たした樋口菜摘さんと夫の昌義さん。二人ではじめて王滝村を訪れたのは2025年の冬、極寒の2月のことでした。
「一番寒い時期に来たけれど、『やっぱりいいところだな』って思えました。夫も『なぜか落ち着く』と、すぐに気に入って。子どものころからよく来ていた場所だったから、ここに暮らすイメージはすぐにできましたね」
現在、二人が暮らしているのは、菜摘さんの祖父母が暮らしていた築100年を超す古民家。玄関の土間の下には漬物を保管する「室(むろ)」が掘られていたり、馬を飼っていた痕跡があったりと、懐かしい暮らしの記憶があちこちに残っています。



ただし、古民家での冬はまさにハードモード!
「小さい薪ストーブを買って、囲炉裏のあった場所につけようと考えたんですが、素人なので大掛かりな工事はできなくて。
家は大きいんですが、最初の冬は寒くて、ストーブのあるキッチンからほとんど動けませんでしたね。寒さ対策も、これから少しずつやっていきたいことの一つです」
それでも、子どものころ走り回った居間や、家の外にある地下水の水場など、この家は菜摘さんにとって「懐かしくも楽しい思い出が詰まった場所」。
「ここにいると、いろんな思い出が蘇ってきたり、逆に囲炉裏の跡を見つけるなど、知らなかった家の仕組みに気づけたりもするんです。ずっと誰も住まなければ、そんな家の記憶もなくなってしまう。改めて、ここに住まわせてもらうことができてよかったと思っています」

ごはん屋さん、農家さん、それとも??
まだ決めきらずにすごしていたい
料理人にアルバイト、そして畑の手入れ。さまざまな仕事に取り組みながら、王滝村の暮らしを紡ぎ始めた菜摘さん夫妻。
「なにもなくて不便じゃない?と聞かれますが、家はあるし、食べ物を育てることもできる。しかもお裾分けで、山のお肉も畑も野菜もたくさんいただいて、むしろ豊かな暮らしをさせてもらっています。なにより、王滝村で、なにかに追われることなく生きていける”安心感”をいただいていると思うんです。
だからこそ、まだ自分たちを『この仕事』と決めきらずに、方向性はゆっくり見つけていきたい。狩猟にも挑戦したいし、この地域には魅力的な古道具がたくさん眠っているので、それらをレスキューして販売するお店もやってみたい。でもまずは、地域のみなさんのことや、この土地の文化を知ることも大事かなって」
関東や南の島など、各地に暮らしてきたお二人が感じる王滝村民の気風は「穏やかで、あたたか」。
「人と人との距離が近すぎるわけではなく、でもあたたかく見守ってくださっているのを感じます。先ほどお話したお裾分けもそうですし、祖父母のことを知っている方が『おじいちゃんは面白い人だったよ』とか『おばあちゃんはきちっとした丁寧な人だったんだよ』、と思い出を聞かせてくれたり、畑のやりかたや暮らしの知恵を教えてくれる人がたくさんいるのが嬉しいんです。
暮らしていた沖縄の、好きな言葉の一つに『まくとぅーそーけー』というのがあって。『誠の心で生きていれば』、というような意味なのですが、じいちゃんとばあちゃんがまさに『まくとぅー』して生きていたから、今の私たちがとても恵まれているんだなあって。日々ありがたさを感じながら、その心もまるごと、引き継いでいきけたらと思っています」
そうそう、もう一つ最近挑戦し始めたことがあるんです、と最後に案内されたのは、昌義さん作の鶏小屋です。
「ずっと願っていた、卵を自給できる鶏との暮らしを、最近やっとはじめられました。予想以上になついてくれて、本当にかわいくて! 二人でメロメロです」

ふたりの穏やかな空気感に包まれて、いつもよりハードモード弱め?だった今回。お二人のように焦らず、一歩ずつ暮らしをつくっていけば、楽しみながらこの地域の日々に溶け込んでいけるのかもしれない、と感じました。
「いつかは与那国馬を王滝に連れてきたい。そんな気持ちも持っています。かつてご先祖様が馬を飼っていたこの土地で、もう一度馬との暮らしができたら。そんなことも、この村なら遠い夢ではない気がしています」
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