ハードモード移住相談

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暮らしにも多様性が求められる今、王滝村のハードモードライフが選択肢のひとつになる。

王滝村長 
越原道廣さん

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越原道廣

王滝村長

こしはら・みちひろ/1961年王滝村生まれ。長野林業大学校を卒業後、長野県職員になる。県内のさまざまな場所で、主に森林整備や子どもの木育などの事業に携わってきた。2019年、県からの派遣で副村長として王滝村に帰郷、22年2月から村長に就任した。休日は趣味の釣りや家庭菜園に勤しむ。

生まれ育った村の未来のために、
村長としてできること。

2022年2月、王滝村出身の越原道廣さんが王滝村長に就任した。現在60歳で、地元出身。そして長らく県の職員として行政に関わってきた経験から、村民からの期待は大きい。故郷である王滝村への思いを聞いた。

「小さい頃は、川に行ってはヤスで魚を突いて採っていました。夏になると牧尾ダムに行き流木を拾い集めて、いかだをつくったことも。さすがにそれは危ないと大人に怒られたことを覚えています。大自然を駆け回って遊んでいました」

楽しい思い出が詰まった故郷。しかし子ども時代から、人口が減っていることは感じていたという。

「小学校1年生のときは41人の同級生がいました。でも中学を卒業する頃には21人になってしまったんです。以前は王滝に森林管理所の事務所があったのですが、国の統廃合でその事務所がなくなってしまい人口が急激に減少。友人が減っていくのは、やはり寂しかったですね」

その後、高校を卒業し全寮制の長野林業大学校に入学、卒業後は県職員となって長野県内の様々な地域に住んだ。

「ここに住んでいる頃は、特に不便に感じることもなかったのですが、県の他の地域と比べると、コンビニもないし、電車も通っていない。ここまで自然に近い生活ができるエリアは、他にはあまりないかもしれません」

県からの派遣で、王滝村副村長に就任したことで再び故郷での生活がスタート。今後の人生は村のために生きようと決め、2022年2月に村長に就任した。

「村の人たちが、気楽に話かけてくれて『ここをこうしてほしい』と要望を言ってくれることが多いです。村の人の声が直接耳に入る風通しの良さは、村のためにもいいことだと思っています。私が一番望んでいるのは、この村が続いていくこと。人口減少は日本全体で起きている課題なのでここに限ったことではありませんが、人がいなければ村は存続できません」

村づくりは、山づくり。行政にも林業の知見を活かす。

村の人口減少を抑えるため、越原村長が力を入れることは村の存在や魅力を多くの人に知ってもらうことだという。

「村に関わってくれる人を増やしていきたい。長野県内に住んでいる人でも、王滝村にきたことがない人は多いと思います。王滝村は、ここを目指してこないとたどり着かない場所。どこか別の場所に通り抜けられる立地ではないので、他の目的地の途中で立ち寄ることがない。そうなるとやっぱり、村のPRが重要になってきます。わざわざ足を運んでもらうためにも、まずは村を知ってもらうことに力を入れます」

観光やイベント参加など、地域を訪れてくれる交流人口を増やし、この場所に愛着を持ってくれる関係人口を増やして行く。そのためには、まず村の人が誇れる村にしていくことが重要。「住んでいる人たちが自慢できるような村づくりをしたい」と越原村長は語る。では、村長が感じている王滝村の魅力とはどこだろうか。

「この美しい自然と景色です。便利になりすぎた社会で、山暮らしができることはかえって貴重です。豊かな自然が資源なので、このまま維持していきたいと考えており大きな開発を進めるつもりはありません。暮らし方も多様になっている今は、あえてこの環境に身を置きたいと思ってくれる人もいるかもしれませんよね。ここに足を運んでくれた人が、気に入って住みたいと思ってくれたならこんなに嬉しいことはありません。より多くの人に王滝村の魅力を伝えていきたいです」

長年山づくりに携わってきた越原村長は、村づくりは山づくりに似ていると語る。

「山をつくるために木を植えますが、その木が育って、建材や木工品の原料として使われるのは、100年以上先のこと。村づくりも短絡的に今がいいからではなくて、次の世代に何を残していくかを考えることが重要だと思います」

最後に、ハードモードライフを攻略するコツを教えてもらった。

「これだけ自然豊かな土地だから、猿も熊も猪もいます。私は自然のサファリパークなんて呼んでいます。大切なのは駆除することだけではなく、共存していくこと。自然とも動物とも一緒に生活をしているという意識が大事です。ここに住んでいると、私たちは自然に生かされているということを実感しますよ。人間が自然をコントロールすることは不可能。しかし人間には知恵があります。知恵を使って、生活をつくりだす。それがハードモードライフを楽しむひとつの方法だと思います」

Text: 宮原 沙紀

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