ハードモード移住相談

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【突撃!はーどもーどらいふ】 のんびり大学生 小関が奮闘!「甘~いとうもろこしの、甘くない収穫体験。編」

JA女性部王滝支部「畑の会」会長 
宮本美弥子さん

Profile_

宮本美弥子

JA女性部王滝支部「畑の会」会長

1998年に王滝村に移住。2020年よりJA木曽王滝支所女性部の「畑の会」会長に。大先輩たちが守り継いできた畑で、30名ほどの仲間ととうもろこしや村の特産物である甘かぶら作りに奮闘中。また集落支援員として村内農業者のための村合理化組合事業や、役場、農協との連携、休耕農地の利活用促進も手掛けている。

長野県王滝村と包括連携協定を結ぶ長野県立大学の学生・小関一矢さんが村人と出会い、その日々を体験する「突撃!はーどもーどらいふ」。今回は、小関さんが真夏の早朝から王滝のとうもろこしを収穫。

とうもろこしが証明!?
王滝=北海道説。

おはようございます……

みなさん、おはようございます……!

と、早朝のとうもろこし畑に佇むのは、長野県立大学グローバルマネジメント学部3年、小関一矢さん。

同大学と長野県王滝村が包括連携協定を結び進めている「ひろがれ!推し村プロジェクト」メンバーの一人として村に通う小関さんが、「王滝村のハードモードを突撃体験する」新シリーズのスタートです。

集合は、朝6時。肌寒いくらいの気温の畑でこの日、小関さんが行うのはとうもろこしの収穫体験。8月上旬のこの時期が、王滝村のとうもろこし出荷の最盛期ということで、お手伝いに参加させてもらうことになりました。

指導をしてくださるのは、JA女性部王滝支部にて畑の会会長を務める、宮本美弥子さん。転勤を機に王滝村に家族で移り住み、以来約15年、JA女性部王滝支部「畑の会」メンバーとしてこの畑でとうもろこしと赤かぶを育ててきました。

現在は、集落支援員として農業振興の仕事をしながら畑の会の会長を務めています。

「畑の会」会長の宮本美弥子さん。現在の畑の会会員数は23名ほどだとか

「王滝村は北海道と同じくらい朝夕の寒暖差があるから、おいしいとうもろこしができるのよ」

「王滝の気温差は、北海道並み! どうりで寒いはずですね」

「昼間は暑くなるけど、真夏でも朝はだいたい20度以下。このくらいの気温のうちに収穫しなくちゃ、せっかくのとうもろこしの味が落ちちゃうの。
とうもろこしは涼しい朝のうちにとることで、糖度が落ちないうちに届けられる。だから、甘くておいしいのよ」

「なるほど···早起きには、ちゃんと理由があったんですね」

収穫、でも収穫できない理由。

と、いうわけで、宮本さんは軽い足取りでとうもろこし畑の奥へと進んでいきます。

よし、収穫ですね、手伝います!ここから順番に穫っていいですか?

かたっぱしからとりまくるぞ、俺が秒で終わらせる

意気込む小関さんを、宮本さんが全力で静止!

あーーーー、ダメダメ!!!!!

えっ、収穫ですよね?収穫しちゃダメ?

とうもろこしは、なんでもとればいいってもんじゃないのよ。1本ずつ生長具合を確かめて、熟度を見極めて収穫しなきゃ。

・大きく育っているか
・しっかり熟しているか

選ぶのは難しいけど、とうもろこしの様子がちゃんと教えてくれるのよ

聞けば、一本の苗から収穫するとうもろこしは、たった一本だけ。チャンスは一度だからこそ、無駄なく、おいしいとうもろこしを届けるために、細心の注意を払っているのです。

これは、一本のとうもろこしの皮のなかにもう一つ、小さなとうもろこしができてしまっている例。
「妊婦さんみたいよね、こういうのもたまにあるの」(宮本さん)

改めて、宮本さんに熟したとうもろこしの見極めかたを教えていただきます。

「私も、何年やっても毎年一年生の気持ちだから、難しいんだけど……

・茎に張り付いていたとうもろこしが下に倒れてくる
とうもろこしの「ヒゲ」が、濃い茶色に変色してくる

のが、外観のめやすかしら。あとは外からそっと触ってみて、全体がパンッと張っている感じがすると『あ、とってほしいって伝えてるなあ』って思うんです」

だいぶヒゲが茶色くなってきたとうもろこし。そろそろ収穫のとき

これ、どうですか?

うーん。ダメ、まだ小さい

これはいけそうです!

ダメだよこれは、虫くってるわ

そんなやりとりを繰り返しながらも、少しずつ収穫できるように。

見極めが難しい!でも、ちょっとずつわかるような気がして、楽しくなってきました

いいね、その調子であと少し、がんばって

OKがもらえると、無性にうれしい・・・!

こうして、この日出荷分のとうもろこしはどうにか収穫完了。
根もとを切り揃えて、美しく箱詰めし、待ち望んでいる村民のところへと届けられます。

「せっかく育てたとうもろこし、見た目も綺麗にして出してあげたいでしょう?」と、
この日とうもろこしの「押し切り」を担当していた森鈴子さん

とうもろこしと、地域の未来。

およそ1反歩(10アール)ほどの敷地に、約2600本植えられているとうもろこしですが、ほとんどすべて村びとたちのリクエストで売り切れてしまうそう。

「さすが、大人気ですね!」

小関さんがいうと、宮本さんはその人気の理由の一つについて、こんな話をしてくれました。

「昔はたくさんの人がそれぞれとうもろこしを育てていたの。でも、高齢化も進んで、猿の被害も増えて、だんだんできなくなる人が増えてきてね。でも、せっかくの夏、帰省してきた子どもたち孫たちにもおいしいとうもろこしを食べさせたい。そんな思いから、みんな注文してくれるのよ。

だから私たちも、『おいしい!』って言ってくれるものを、届けたいじゃない。それに、地域のもう一つの特産品である『すんき』の原料になる赤かぶを育てるためには、とうもろこしを栽培することが大事。これで、赤かぶの連作障害を防げるの」

※すんき:地域在来のかぶの葉を塩を使わず漬物にする、木曽地域伝統の発酵食

そんな話をしていると、

「あ、由喜江さん!」

宮本さんがうれしそうに声をかけたのは、JA木曽女性部部長を務める、松下由喜江さんです。

私がJA女性部に入ったきっかけは、由喜江さん。村の社会福祉協議会に勤めてボランティア担当をしていたとき、お願いするといつでも快く地域のボランティア活動を引き受けてくれたのが由喜江さんなんです

「マスクを取るの?恥ずかしいからいいわ」と、控えめな松下由喜江さん

そして、女性部のとうもろこしづくりを、「ちょっとお金を稼げる楽しみにもつながるように」と尽力してきた宮本さん。

赤かぶの栽培と合わせて、「良いときに利益を還元し、不作のときにもマイナスを補えるように」と、改革も行ってきました。

「やっぱり、ただ楽しみだけだといつか消えてしまうじゃない?もちろん、女性部のなかの活動なので、営利目的ではないけれど、働いた人にはちゃんとお返しをして、みんなでこれからもおいしいとうもろこしや赤かぶ、そして『すんき』をつくっていきたいんです」

そんな宮本さんが今、王滝村にほしいものは?

小関さんが尋ねると、答えはひとこと「仲間かなあ」。

「集落支援員として耕作放棄地を解消したり、こうなったらいいな、って思うこと、やりたいことはいっぱいあるの。地域に仲間が増えてくれたら、たとえば、もっと地域の祭りを盛り上げたり、そんな夢を現実のものにできるし、持続していけるなあっていつも、思っているんです。

冬は寒いし不便もあるけど、おいしい水があるし、夜には綺麗な星も出る。『何もないのがいい』って思える人なら、きっと楽しいよね

小関くん、とうもろこしでも食べて、そんな人がどうやったら来てくれるか、考えてみて!」

とうもろこしとともに大きな課題を受け取り、小関さんは村の拠点「常八」に戻りました。

誰かを想って、育まれたおいしさ。

「とうもろこしは茹でたらおいしさが逃げちゃうからもったいない。蒸すか電子レンジがおすすめよ」

宮本さんからそう言って手渡されたとうもろこし。長野県立大学生の村の拠点「常八」にて、早速蒸していただきます。

鍋を火にかけて10数分。蓋をしていても、あたりに甘い香りがただよってきました。

ほわわわ~~ん

王滝の美しい青空の下、早速かぶりつく小関さん。

「!!!」

う、うまい····ジューシーで、甘さが尋常じゃない。パリッとした食感もたまらない!

村の人が、村の人を想って育てられているとうもろこし。早朝の集合に品質の見極めなど、若干ハード?な面もありながら、その先には愛情たっぷりのおいしさが待っていました。

「山の朝の清々しさも、このとうもろこしのおいしさも、体験しなければわからない!

改めて、村の暮らしに関わることで得るものはすごく多いと感じた一日でした」

ところで宮本さんからの課題、「仲間を増やすには」に、小関さんはどんな答えを見出したのでしょう。

「僕の感覚からいうと···まわりの学生の声を聞いていても、正直、『すぐに移住します!』と決断できる人は多くないとは思います。でも『第二の故郷』『今後も関わりたい』という声はたくさん聞いていて。

ならば、一人の移住だけを目ざすのではなく、つねにたくさんの人が少しずつ関わっている状態を長く作ることも、『仲間』がいる状態と呼べるでしょうか」

山を見て、とうもろこしを食べながら考える・・・

「まだまだ、まずは自分自身が知ることからですね」

と、決意を新たにする小関さん。

次は、どんなハードモードが待っているのでしょうか。

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