「ご当地T」は、ハードモードな王滝暮らしのユニフォーム?
村の観光案内所でも、ふとすれ違う人のコーディネートにも。
王滝村に滞在していると、よそでは見かけない、ちょっと個性的なTシャツを目にする機会が多いことに気づきます。
しかも、それは一種類ではなく、色もデザインも多種多様。
お土産として売られている一方で、村民の着用率もかなり高め。
王滝村にとってご当地Tはいわば、「ハードモードな王滝の暮らしのユニフォーム」のような存在にも、感じられるのです。
「王滝村ってちょっと、ご当地Tシャツ多くない?」
今回の企画は、そんな気づきからはじまった「冒険」。
いったいどんなご当地Tがあるのか、なぜそのTは生まれたのか。
源流をたどるべく、各地を訪ねてみました。

グッズそのものが、発信力を持つように
愛らしい熊がゴーグルをつけ、スキーを楽しむ様子や、80年代的な懐かしさを感じるスキーウェア姿の女の子。あるいはシンプルに筆文字が配された、Tシャツやトレーナーも。街なかでも身につけたくなる、ハイセンスなグッズを生み出し、話題を呼んでいるのは「御嶽スキー場」。王滝村役場からさらに30分ほど山道を登ったところにある、日本屈指の高地スキー場のひとつです。

ゲレンデ最高部の標高は、2,240メートル。中央アルプスの大パノラマと、極上のパウダースノーが近年再注目され、スキー・スノーボードファンから熱い支持を集めている、このスキー場。ゲレンデで食べられるおいしい食事(ゲレ飯)でも注目を集めるなど、話題に事欠かない場所となっています。
しかし、「じつは少し前まで、来場客の減少が止まらない、危機的な時代が長く続いていた」というのは、以前当ページの記事で支配人を務める家高里加子さんにお話しいただいたとおり。
”もう一度、スキー場の復活を”と取り組むなかで行ったグッズづくりには、どのような思いを込めたのでしょう。

「現在、御嶽スキー場の運営会社となった株式会社シシの代表である岩堀(翔太)が、とてもセンスのある人なんです。浜松出身で、現在浜松でも事業を展開している岩堀は、『グッズをつくるなら、それそのものが発信力を持つものでないといけない』という考えで、イラストを依頼するアーティストさんの選定にはかなり力を注いできました」
いつもどこかに「王滝らしさ」をしのばせて
「発信力あるグッズづくりを」とはじまったグッズづくりプロジェクトの展開のなか、出会ったのが、今や数多くのメディア等で活躍する、新進気鋭のアーティストたち。書道家の青柳美扇さんやイラストレーターのオカタオカさん、そして韓国を拠点に活躍する나무13(ナム13)さんなど、いずれも当初から人気を博していましたが、「グッズが出てからの注目度の高まりが、さらにめざましくて。たとえばナムさんのグッズは、BEAMSさんからお声がけがあり、2021年に東京でも販売されたんです」と家高さんも嬉しそうに話します。

そんな彼らにイラストを依頼する際、岩堀代表や家高さんが意識しているのが、「たんに”スキーをテーマに”だけでなく、王滝らしい要素を入れること」だとか。
「御嶽山を背景に入れてもらったり、ロゴをさりげなく描いてもらったり。どこかしらに御嶽スキー場でなければ描けない要素が入ることで、特別感がうまれますよね。今期、新たにオカタオカさんに依頼したイラストにも、シシが地域で手がけて人気の『ララカレー』や、冬季営業がはじまる銀河高原ロッジの建物なども加えてもらっているんです」
それにしても、予算も限られているなか、互いに相乗効果を生み出せるアーティストとコラボレーションする審美眼はさすが。こうした一つひとつのグッズが御嶽スキー場の新しいイメージを育み、集客にもつながってきていることを、家高さんも実感しています。
「私自身は正直、ここに来た当初は『ていねいに接客をすれば、きっとお客さまにこの場所の魅力が伝わる』という考えだったんです。けれど、グッズが完成してみると、その存在が想像を超えた広がりをみせていって。わが社のボスながら、判断力は改めてすごいと思っています」(家高さん)
グッズをきっかけにイメージが変わる、行ってみたくなる
こうして生まれ、大人気となった御嶽スキー場グッズたち。
村内でもTシャツはもちろん、フードつきのパーカーが「かわいくて、あたたかい」と長野県立大生にも好評を博すなど、若者にも愛されています。
また、スキー場で働くスタッフたちの姿を見ると、20代〜30代の姿が多いことに気付かされます。
派遣として働いたことをきっかけに移住するカップルや、都市部から戻ってきたデザイナーさん、ネイチャーガイドを行う地域おこし協力隊も。御嶽スキー場が活気づくことで、多様な人材がまた王滝村に集まってくる、その新たな流れにもグッズたちは貢献していると、家高さんは感じています。

「それから私たち、ゲレンデ食にもすごく注力しているんです。おいしいもの好きな岩堀が、これぞというお店を外から連れてきて、驚くようなお得なメニューをつくっています。集落から離れていることもあり、これまでは地元の方とって『旅行者が行くところ』というイメージも強かったスキー場ですが、これからはたとえスキーをしなくても『スキー場にごはん食べにいこうか』って思ってもらえるような存在にもなれたらと思っています」